だから、僕はこの手を握り締めた。

小さい頃、僕は大好きな玩具をいつも持ち歩いていた。
大切なものだから、いつも持っていたくて。
大切なものだから、友達に自慢したくて。
大切なものだから、自分以外には守れないと思っていて。
僕はそれを力いっぱいに握り締め、どこにでも持って行った。
親に怒られると、玄関先で泣き喚いた。
そんな大事な玩具は、いつも真っ先に壊れた。
ずっと握り締めるからすぐに色褪せるし、
ずっと遊んでるからそのぶんだけ痛みも激しいし。
あれからもう20年近く経つ。
僕は空っぽの手をぎゅっと握り締める。
大切なものを、握り潰さないように。