silence.

ただ、黙る他ない。 形を与えるくらいならば。

none

私がかつて何かだったことが、果たしてあっただろうか。欲と倫理の対消滅。無だけが仄かに揺らめく。

「蜜」

略奪の連鎖その果てで紅茶が香る 花弁は 尚も 綻んでいる

定義:【枕】

「ああ、あなたのうでじゃなかった。」

定義:【シャンプー】

洗い落としたかった、この髪を撫でる追憶を。 それでも纏ってしまった、かつて在った香りを。

定義:【六分儀】

此処が何処かだなんて星さえあれば解る そう教えてくれましたね 貴方は何処ですか?

定義:【陽炎】

揺らめく その点で 随分と 現実に近しい

木目について

土から 立ち上る 河 肉体を 逆巻く 渦 呼吸の 奥の 闇 叩き割り 薙ぎ倒し 引き剥がす 樹は 血を 流さない 樹は 誇示する 深く 刻んだ 時空を 命の 強度を

「熱い。」

意識を離れ 縮められた 掌 怖れ その前の 一呼吸 「熱」 加速する 振動 加速する 劣化 加速する 加速する 加速、加速する、加速、 加速、脊髄反射、加速、加速、酸化、 加速、加速。 恐れ、 痛み、 ――何へ? ――――、 また、 痛みが 遅れ 消し炭。

夏の残響。

沈黙、草放射冷却 沈黙、跳ね水残響 陽炎の残り香を闇の湿度を嗅げ

Une aventure.

指が知らない熱を掻く ひとりとひとりの舌。 凍えるなら夜風より此処が良かった

Filled with.

満たされている 不在によって追憶によって 私は満たされている

Snow comes.

足元に 微かな月光 大気に満ちる 無音の舞踏 雪が 降りる

La chaise sans maitre.

夜の底で 不在が 喧しい 「かつて」 三音節の狭間の 輪廻 束の間の悠久 主無き安息日

The Bluest.

穏やかな凪の底の 潮流 遥かな天を横切る 突風 胎動する この蒼が 全ての始まり

化粧。

「月に一度の晴れ姿だ、邪魔されたんだから、頬紅くらいは頂いていくさ」 まんげつはそういって、かげのむこうでにたりとわらった。

磔刑の空。

今宵はどうも紅い月が昇るそうだが 雲は素知らぬ顔して蒼穹に首括られている

十六夜待

目を凝らしても 気付きようのない 欠損 昨日への賞賛が 今日を 認識の彼方へ 朧に煙る 仄白き闇 滲んだ 十六夜の月

fantasma/cantus

瞼の中に 熱 残響は 背骨に渦巻く 喉の奥の 蜃気楼 声と 中指が 此処を 泳ぐ

Elan vital.

佇む、 その中を蠢く 激流 呼吸に 嵐は 熱と 共に 在る それが 速く強い

【火傷】

1:《function》 [イタイ:もうおなじことをしないために] [アツイ:すぐにそこからにげるために] 2:《expression》 『それでも、僕は触れてみたかった』 3:《unction》 「傷は癒えて、痛みを忘れるから」

La Valse.

un 三歩しか歩めぬ檻。 deux 繰り返す、繰り返す、 trois 華やかなる因果応報。

pianissimo.

遠ざかる高次倍音(フラジオレット) 風の隙間にオリオンが佇む 凍結しろ、言の葉。

いつからか、そこに在った。 沈黙する彩り 影を落としたのは、私だった。

暴食。

今の俺には、 エロスと体温と祈りと美と狂気と肉欲と優しさと暴力と友愛と執着と体力と精神力と決断と知識と嫉妬と悪夢と歌と閃きと運と腕力と衝動と愛情と妥協と自尊と怠惰と労わりと構成力と奉仕と憤怒と希望と悪意と節制が足りねえよ。 どれか一つでも構…

Breathe.

独りで呼吸するのにも飽きた。 だけど、一体誰と何を話せばいいだろう? 僕は全てが好きで、 何も愛していない。 ただ黙って中指でも泳がせていたい。 雲の遅さに目を細めながら。

もう一枚の風景写真 ”it snows.”

――――沈黙。 (全てを、塗り潰すように) 彩色 否定? 静止、 (全てを、塗り潰すように) 「 」 "S" ――――。 (それでもなお、塗り潰すように。)

Bird Land.

鎖堕ちる推称に拠る 瞬くは巡り梳かして 刎ね爪弾く藍の仮名で 今は爛れ威厳なる薙がれに 浸され四季蓑縋るを "―――カクシテ、ニセモノノトリハカナタヘ"

風景写真:四(snow-ing.)

――――沈黙、 (あるいは、塗り潰すように)

かたち。

詩を記すには、言葉は邪魔な気がして 音楽を奏でるには、音では足りない気がして こんなにも響いているのに こんなにも渦巻いているのに 掴めば、歪む。触れられなかったものばかりが美しい