「哀しい私の子供達が囁く。何故、何故と。 人は私を見上げて泣き叫ぶ。何故、何故と。 私はただ全てを照らす。 理由を創ることなどなく、ただ光を湛える。 私はただ其処にあるだけの鏡。 願わくば、私の光がそれぞれにとっての祝福でありますように……」
「この温もりを何よりも求めた。 手を取って歩く、其の先が奈落だったとしても。 貴方に裂かれるということは、最期まで貴方に触れてもらえるということなのだから。」
「生きることは滅ぼすこと。 愛することは生きること。 食べることは生きること。 死することは罪。墓の横に曼珠沙華が咲いている。」
「人は私を見上げて希望を語る。 私自身の望みはただ地に落ちて逝くだけ。 此れより上が無いということと、底辺に在るということはいったいどれほど違う?」
「私は信じます。 きっと明けない夜はなく、止まない雨もないということを。 私が今滅んだとしてもきっと明日は来るということを。 私は最期まで私の希望を捨てない。」
「壊すことと創ることは等しいと信じていた。 破壊に飽いた今も、私は鑿を振るうことをやめない。 きっと生活とは矛盾するということだ。」
「生とは死に向かうことだとするならば、 美しい生の形とは美しい死の形なのではないだろうか。 それでも美を永遠のものと評する矛盾には目をつぶったとしても。」
「何かから逃れる為に人は集う。 何かから遠ざかる為に人は集う。 集うことが最も惨いことと知っている筈なのに。」
「病から逃れることを人は望む。 死の腕から少しでも遠ざかることを人は望む。 それを叶えたいと祈っていても、それが叶わないことは誰よりも解っている。 ―――愚かとはいったいどのような状況なのでしょうか?」
「あらゆる言葉に勝る旋律があると私は信じている。 文字が此処に留まっている間、私の唄は宙に解けていく。 最も残酷な者でも、空間から逃れることは出来ない。」
「ただ生きているだけで私はこんなにも美しい。」
「魚が地を這うことが出来ないように、 犬が空を飛べないように、 私もこのようにしか存在出来なかった。 どんな温もりも何時か消えるという事実が私を縛るのだから。」
「知りたいと思った。 伝えたいと思った。 この声が私の存在する証だと思った。 たとえ私が滅んだとしても。」
「怨嗟も、感謝も、届くことはない。 此処を分かつのは秩序という名の神でしかない。」
「終わりの無い生は無い。 あらゆる美しいものも醜いものも、皆等しく土の中で腐っていく。 ……緩やかにしか無へと向かえない生命の何と悲しいことか。」
「世界とはなんて美しいのだろう! 生命が野に溢れている。 一歩踏み出すごとに風は渦巻き、遠くで家族の呼ぶ声がする。」
「何よりも清く在りたいと私は願った……灼かれることを贖罪と言うのならば。 そして私には何も要らなかった。」
「ここに祈りの形をした嘆きが満ちている。 それでも、主は自らの命を絶つことを禁じた。 人は人の為にしか祈らない。私は私の為にしか祈らない。 主よ、哀れみたまえ。 貴方が創りたもうた命がここに祈ります。」
「生きるために食べる。 食べる。 食べることを愛する。 生きることを愛する。 鍋の中に、かつて生命だったものの残骸が漂う……私は生きることを愛する。」
「何者にも縛られない在り方は、果たしてどれほど幸せか? 私は個ではなく、只の流れとしてのみ在るというのに。」
「恐ろしいものは無かった。恐るべき者も。 我が屍は友の為の階段。 私はただ敗北のみを恐れた。 そして遂に私は敗北することなく、私の願いは成就した。」
「百の言葉に勝る十の唄が在る。 私の指は只一つの音符、この腕は一節の旋律。 其れ故に知り得ること、其れ故に失くしたこと…… 蝶は舞ってもいないのに、舞うことを強いられる。」
「集積。知識の集積。誰かが語り得た知識の集積。 では、語るべき者がいない時、私は?」
「僕はただ知りたかった。 生き延びるために、出来れば幸せに生き延びるために。 本にはこう書いてあった。『語り得ぬことについては沈黙せねばならない』と。 僕は、何も語り得ない。」
「私は全てを抱く。 人を、風を、木々を、家を、畑を、血を、嘆きを。 ただ私は全てを抱くのみ。 そこから何も還すことは無く、 私が何かを語ったことは無かった。」
「淋しいと死んじゃうなんて、そんなの嘘だよ」 誰かがそんな風に笑っていた。 孤独に耐えながら在り続けた。 何に縋りつく為に? 何を守る為に? 風が何処かで生まれた振動を運んでくる。 幽かで希薄な拡がりが、世界を包む。 認識された世界だけが確かなモ…
こんなにも美しい 弔いが在る。 水底で 腐る。 腐る、 淀み 蝿が、渦に乗った。 そして
ただの振動。 空気が震える、そんな現象。 「アイシテル」 こんなにも震える、声。
在ることが、価値。 在ることが、美徳。 在ることが、生命。 在ることが、生産。 「抱き合う二人が葉の上に影を落とす」
いつだって、夢は何も奪わない。 走馬灯のような怠惰、目覚めが連れてくる明日。 僕はこんなにも止まっていたいのに。 ここに、誰よりも優しい檻が在る。