午前4時30分。

喉元で渦巻いていた千の言葉、
振り上げられなかった拳、
言葉にすらならなかった感情、
そんなものが今更、形をもってどうする?
あの時何をするべきだったのかはわからない。
何を言うべきだったのか、それとも言わないことが必要だったのか、
殴りつけるべきだったのか、それはわからない。
ただ、現実にしたことでは足りなさ過ぎた。


何に対してか分からない憤りが在る。
誰に対してでも、自分自身に対してでもないとは思う。
ただ、僕は一人になりたくなった。
それが果たして良いことだったのか、
少なくとも悪いことではなかったのかは分からないけど。
何に対してか分からない憤りに沈んでもがくのを見せたくなかった?
笑える自信が無かった?一人でゆっくり考えたかった?
……いや、分からない。
ただ、一人になりたいことは間違いなかった。
だから、一人で家まで歩いた。
そして、ただ憤っていた。
それは事実だ。
ただし、その憤りはいつもより曖昧だった。
泣き喚きたい衝動にかられるわけでもなく、
(いつものように)街中の看板を蹴り飛ばしたい気分になるわけでもなく、
ただただ胸板の皮一枚下からさわさわと染み出てくるような憤りが在った。
そして、悔しかった。多少は泣いた。
何に対してかは分からないけど。


みっともなくなりたい。
問い詰めたい。
殴り倒したい。
それが大切な人にとって良いことかどうか、
一瞬で判断して動ける人になりたい。
分かったような顔をして鼻で笑っておきながら、
衝動と利害と気遣いと信頼を秤にかける自分は嫌。
幸せとは何か聞きたい。
好きとは何か訊きたい。
今だって迷っている。
あの時どうすれば良かったか、
何が尊敬する人達と、愛すべき友人達と、
この僕の感情にとって良かったのか。
日常の続きをするのが幸せなのか、
それを抑制するのが幸せなのか、迷っている。
分からないことが多すぎる。
分からないなりに決断出来ない場面が多すぎる。
決断してなお躊躇する場面が多すぎる。
分からない。


誰も彼も……無論僕も含めて……皆が幸せになる道は無いのかなあ?
せめてその次善の策や、妥協点みたいなものは無いのかなあ?
問いは尽きない。
一人になったからか。
一人になりたかったけど、一人で帰ったことをどう思っただろう。
……問いと躊躇が多すぎる。
後悔が多すぎる。
今更こんな所でぼやいてどうする?
情けないから寝る。