時には昔の話を。

あの子はよくピンク色のニットを着ててさ。
俺はよく黒のニットを着てたんだけど。
一緒にいる時はいつも俺は膝の間にあの子を座らせて、
後ろから抱きしめてたからさ。
ああ、お互い何かしてる時でも、どこか一箇所は触れ合ってたな。
そうすると、俺の黒のニットにはピンク色の糸屑がびっしり付いててね。
俺はそれがなんか嬉しかったんだ。
温もりの残骸がまだ俺を求めてるって。
ちょうど、こんな季節の話だ。
ただの、昔話だ。